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災害時の法律問題(東日本大震災に際して) |
借家の法律問題
地震や津波で借家(アパート)が壊れた場合、予想されるトラブルは次のようなものです。
(1)立ち退きと修繕の問題
建物が大きく損壊した場合に、家主側は建物滅失による契約終了を主張するのに対し、借家人は修繕可能だと主張して紛争になるケースが予想されます。
阪神・淡路大震災のときもこの種のトラブルが多発しました。
解体費用が公費から出されたことや、取り壊したほうが様々な救済措置を手厚く受けられたことから、多くの家主が取り壊しを望んだことが背景にあったようです(今回の震災では解体費用の公費支出は見送られる見通しですが、その代わり救済措置は手厚くなりました)。
法律的な見地から言えば、建物が修繕可能かどうかが分かれ目になります。
完全に潰れてしまえば修繕不能=建物滅失ですが、むしろ微妙なケースのほうが多いと思います。
そして、修繕可能かどうかは、物理的な面だけではなく、経済的な面からも検討します。 すなわち、修繕をするより建て替えたほうが得だ、という場合は、物理的に修繕が可能であっても、修繕不能=建物滅失として扱われることになります。
修繕不能=建物滅失の場合は、賃貸借契約は終了することになり、明け渡しと敷金精算の問題だけが残ることになります。
修繕可能の場合は、家主としては、費用を負担して修繕するか、立ち退き料を支払って契約解除を申し入れるか、どちらかになります。
なお、応急危険度判定で赤紙を張られたからといって、必ずしも修繕不能とは限りません。応急危険度判定は二次災害防止を目的としているからです。同様に、罹災証明で「全壊」とされたからといって、修繕不能=建物滅失とも限りません(罹災証明は各種公的支援を受けるための基準になるものです。阪神・淡路大震災のときには、被災者に有利になるように重めに判断される傾向があったと聞きます)。
とはいえ、家主側から、罹災証明で「全壊」認定されたから、立ち退いてくれないか、とたのまれた場合、転居費用の提供が申し出られているなど、家主さんの誠意が見てとれるのであれば、できるだけ立ち退く方向で考えてあげたほうがよいと思います。
通常は家主さん受けた被害のほうがずっと大きいはずですし、全壊認定なのに「修繕せよ」というのはやはり酷に思えます。
互いに被災者であるという観点を忘れず、譲り合いの精神で話し合いをしてもらいたいと思います。
(2)行方不明者の残留物件の問題
津波被害を受けた地域などでは、借家人が家財道具を残したまま行方不明になったが、撤去処分してよいか、という相談が予想されます。
結論から言うと、行方不明になったからといって、勝手に撤去処分してはいけない、ということになります。
親や兄弟が連帯保証人として付いている場合は、その方に引き渡せば良いと思いますが、それもできないような場合は、建物明渡しの訴訟を起こし、判決に基づいて裁判所の関与のもとで撤去処分(これを強制執行といいます)をしなければなりまん。
弁護士費用、裁判所手数料など合計で100万円以上かかると思います。
訴訟をせずに無断で撤去処分すると、後で非常に不利になります。気を付けてください。
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