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災害時の法律問題(東日本大震災に際して) |
雇用の法律問題
(1)解雇
我が国の労働法制は、正社員については、終身雇用を前提に作られています。
解雇はあくまで最後の手段であって、通常時であれば、経営上の理由による解雇はなかなか認められないことになっています。したがって、解雇を強行しても、裁判所に無効とされてしまうことが少なくなく、解雇は経営者にとって大変リスクの大きい手段とされています。
ただし、今回のような大災害のときは別です。
工場の損壊や、市場喪失などの事情により事業規模の縮小を余儀なくされ、従業員全員の雇用を続けることが不可能な場合もあると思います。
そのような場合、縮小部門の従業員を解雇することも、やむを得ないものとして有効とされるケースも出てくると思います。
もっとも、解雇は、雇用主からの一方的な意思表示という性質上、法廷闘争に発展することもあります。今回は、どちらも被災者なのですから、できる限り乱暴な手段は避けるべきで、まずは労使間で話し合い、合意退職の方策を探るべきだと思います。
なお、失業保険の関係では、離職証明書の離職理由欄に「事業主からの働きかけによる退職」であると明記すれば、解雇の場合と比べ不利に扱われることはありません。
(2)自宅待機期間の賃金
震災の影響で勤務先が業務休止しているケースも多いと思います。
業務再開まで従業員に自宅待機を命じている場合、自宅待機期間の賃金を支払う義務があるかどうか疑問を持たれている方も多いと思います。
業務休止が震災の影響によるもので、やむを得ないのであれば、賃金の支払い義務はありません。
ただし、従業員にも生活がありますから、就業規則でアルバイトを禁止していたとしても、自宅待機期間についてまでアルバイトを禁止するのは、もちろん許されません。
なお、自宅待機期間が長くなるようでしたら、ハローワークで給付が受けられるケースもあるようですので、問い合わせてみると良いと思います。
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