労働・雇用の問題
【突然の解雇】
Q:勤務先から突然解雇されました。他の社員より仕事の能率が悪い、協調性が足りないなどの理由を告げられましたが、自分なりに精いっぱい働いてきたつもりです。あまりに一方的なやり方に納得がいきません。このまま泣き寝入りしたくありませんが、どのような方法を取ればよいでしょうか。
A:法律上、解雇には厳しい規制がかけられています。
他の社員より仕事の能率が悪い、協調性が足りないなどの漠然とした理由での解雇は、裁判でも十中八、九無効とされると思います。
もとの職場に復帰を希望するかどうかは別にして、弁護士に対策を相談されることをお勧めします。
おそらく費用が原因だと思いますが、法律事務所ではなく、労働基準監督署・労働局・労働委員会などの公的機関に相談をされる方が多いように思います。
しかし公的機関は中立性という限界がありますし、取りうる手段も是正勧告・調停・あっせんなど強制力がないものばかりです。率直に申し上げて、解雇の問題についてはあまり有効な援助は期待できないと思います。
個人加入できる合同労組などに頼られる方もおられますが、労組には裁判が起こせないこともあって交渉力には限界があります。
私が弁護士だから言うわけではありませんが、解雇まで行ってしまったら裁判も視野に入れて弁護士に相談するのが一番です。
また、経営者側にアドバイスするとすれば、一時の感情に任せた乱暴な解雇は絶対に避けるべきです。解雇の裁判で負けたら莫大なペナルティーが待っています。
【ミスを繰り返す社員の処遇】
Q:ミスを繰り返す社員がおります。こちらも親身になって指導はしているのですが、なかなか改まりません。最近は、本人も仕事に来るのが辛そうで、この仕事には向いていないのかな、という雰囲気になっています。雇用主としてどのようなことに注意して今後対応していけばよいでしょうか。
A:どの仕事にも向き・不向きはあります。周りに迷惑をかけている本人も辛いと思います。退職して、自分に向いている仕事を探してもらう時期かもしれません。
ただし、できるだけ解雇は避けてください。解雇訴訟ほど結果の読めない裁判は少なく、また、敗訴した場合のリスクも非常に大きいからです。
親身になって指導をしてきたのであれば、本人の長所なども把握しているはずです。適性があると思われる業種を具体的に指摘してあげるなど本人の感情にも配慮した上で、円満に雇用関係を解消できるよう対応していただきたいと思います。
結果的に、どうしても解雇しなければならないケースもありますが、リスクを減らすために、戒告+始末書の提出など段階を踏んでください。いきなり解雇するのだけは絶対に避けるべきです。
【労働審判】
Q:通常の訴訟のほかに、労働審判というものがあると聞きました。通常の訴訟とどこが違いますか。
通常の訴訟は、期日の回数制限がなく、当事者の主張・立証が尽きるまで続けられます。訴状の受理から判決言い渡しまで1年〜1年半くらいかかるのが普通です。
これに対し、労働審判は、期日は3回までと決められています。通常、申立書の受理から4か月内には終わります。
3回目の期日は、和解の話し合い(調停)をし、不調なら審判(判決)を言い渡すだけですので、実際に当事者が主張・立証できる期日は2回です。短期集中で行われる分、通常の訴訟に比べ審理が粗いところは否めません。
そのため、当事者が裁判所の審判(判決)に異議を述べれば、労働審判の審理は全部無効になり、通常の訴訟として始めからやり直すことになっています。
とはいえ、2回の期日に全力で臨むことによって裁判所もそれなりの精度で心証を得ることができますし、裁判官の和解勧告には従う方が多いので、多くの事案では、おおむね裁判所の判断に沿った和解(調停)が成立しています。
過労死など金額が大きい事案に労働審判は不向きですが、不当解雇や未払い賃金の問題など一般的な労働紛争については、早期解決が期待できる労働審判をお勧めします。
なお、労働審判は、茨城では水戸地方裁判所だけが取り扱っており、また、全ての期日に本人の出頭を求められますのでご留意ください(通常の訴訟では本人尋問のときだけ出頭すればよいので、ここも相違点です)。