医療事故・医療法務
【医療事故】
Q:医療事故はすべての法律事務所で取り扱っていますか。
A:医療事故を取り扱うには、法律だけでなく医療の知識も必要となりますから、対応可能な法律事務所は限られています。
また、患者側の法律事務所、医療機関側の法律事務所と完全に色分けされているのも特徴です。
医療機関側であれば、保険会社や医師会、歯科医師会、保険医協会などに経験豊富な弁護士を推薦してもらえばよいと思いますが、患者側ですと信頼できる弁護士を自分で見つなければならないのが現状です。
ここ10年で弁護士数は2倍以上に増えました。そのせいだと思いますが、十分なスキルもないのに着手金欲しさに依頼を受ける弁護士が増えてきたように思います。
医療機関側の弁護士は保険会社などに選別されていますので一定のレベルは確保されていますが、患者側弁護士は法律にも医療にも不案内な一般市民を相手にしているせいか、質のバラつきがはなはだしいという印象を受けています。
ホームページ上の勇ましい宣伝文句などには惑わされず、医療事件を何件くらい取り扱ったことがあるか、カルテやレントゲンを自力で読めるか、医学用語をわかりやすく説明できるかなど実績や知識の程度を確かめてから依頼しましょう。
【医療記録の送付要請】
Q:@裁判所から患者の医療記録の送付要請文書が届きました。応じるべきでしょうか。
A弁護士会から患者の医療記録の送付要請文書が届きました。応じるべきでしょうか。
A:交通事故の裁判などで医療記録の送付要請はしばしば行われています。
裁判所からの要請には応じていただいて全く問題ありません。
弁護士会からの要請には無条件では応じず、患者(又は遺族)の同意書(遺族の場合は相続関係が確認できる戸籍謄本等の写しも)を付けてもらったほうが無難です。
【患者によるカルテ・レントゲン開示要請】
Q:患者さんからカルテ・レントゲン写真等の開示要請がなされました。弁護士と医療訴訟の相談をしているようですが、要請には応じなければなりませんか。
A:患者本人からの開示要請には、その目的にかかわらず応じてください。
拒否すると、後日、裁判所により「証拠保全」される可能性があります(証拠保全は、診療時間帯でも容赦なく実施されます)。
医療関係者のなかには、”訴訟を目的としたカルテ等の開示要請には応じなくても良い”、などと述べておられる方もいますが、裁判所には通用しない言い分です。
医療記録の開示は法律家の領分です。迷ったら弁護士のアドバイスを受けてください。
【患者側の弁護士から説明会の開催を求められた】
Q:患者側の弁護士が説明会の開催を求めてきました。どのように対応したらよいでしょうか。
A:弁護士にも色々なタイプの方がいます。汚い手を使うこともいとわずに高額の賠償を勝ち取ることのみを目的にしている方もいます(人権派と呼ばれる弁護士にもそのような方は見受けられます)。
よって、こちらが誠実に対応しても、相手も同じように対応してくれるとは限りません。実際、説明会が揚げ足取りの場に終始したり、一方的な約束をさせられたり、録音テープを恣意的に編集されて後日訴訟に提出されたり、等々、説明会をめぐるトラブルは少なくないようです。
事案によっては、文書で回答することが適切な場合もあります。
いずれにせよ、患者側に弁護士が付いている以上、医療機関側も弁護士を選任すべきです。自分だけで対応するのが一番いけません。医療専門の顧問弁護士がいなければ、医師会、歯科医師会、保険会社などに紹介してもらってください。
【院長急死による閉院】
Q:個人開業医の夫が急死しました。後継の医師がいないので、閉院しようと考えています。患者さんへの対応、残ったスタッフの処遇、金融債務の支払い等々わからないことばかりです。どうしたらよいですが、
A:奥さんが金融債務を連帯保証しているかどうかが一番のポイントです。
連帯保証していなければ、相続放棄により金融債務の責任を免れることができるからです。
ご主人は奥様を受取人として生命保険をかけていると思いますが、生命保険金は遺産ではないので、相続放棄しても生命保険金は受領できます。
他方で、夫の財産(預金など)に手を付けると相続放棄の権利が無くなってしまいます。夫の資産かどうか区別が難しい給付金もありますので、専門家に相談してください。
患者さんへの対応は不可欠です。そのために、スタッフには最低でも2、3週間程度は残ってもらう必要があります。
相続放棄の権利を失わないために、スタッフの賃金は奥様が立替払いしなければならない場合もあります。小さくない負担ですが、ここでケチるとより深刻な混乱に巻き込まれますので、慎重に検討してください。
奥さんが金融債務を連帯保証している場合は、相続放棄しても意味がありませんので、生命保険金に加え、不動産などの資産を換価して金融債務を返済するしかありません(診療所の売却は一般に容易ではありませんが)。