刑事弁護
【私選と国選の違い】
Q:家族が逮捕されました。私選弁護人を付けるかどうか迷っていますが、国選弁護人との違いは何でしょうか。私選弁護人を付けることのメリットや一般的な費用について教えてください。
A:国選と私選の割合は、茨城では8対2くらいです。
あくまで一般論ですが、費用に余裕があるのであれば、私選弁護人を付けたほうが良いと思います。
争う事案であれば、国選弁護では十分な費用が出ないこともあって、残念ながら弁護を尽くすことが難しい場合もあります(私が経験した例ですと、交通事故案件で、私的な鑑定費用に50万円以上かけ成功したケースがありましたが、国選だったらとてもそこまでできませんでした)。
罪を認めている事案であっても、被害弁償や身柄の早期釈放などの弁護活動は、良い弁護士を私選で付けたほうが高いクオリティが期待できるように思います(国選では、弁護士を選べません)。
また、国選では裁判と直接関係ないことまでは対応できませんが、私選ではその点も契約で自由に決めることができます。
弁護士を自分で選択できること、裁判以外の周辺部分もトータルにサポートしてもらえること、以上が私選のメリットです。
国選も私選も受けられる弁護サービスには大差ないというアドバイスをする弁護士もおりますが、真に受けないほうが良いと思います。国選は、国費で賄われるものである以上、それなりの限界というものがあります。
ちなみに、当事務所では、私選は交通事故など一般市民の刑事事件についてのみ取り扱っております(暴力団関係者、常習者等については取り扱っておりません)。
弁護士費用ですが、認めている事案では着手金・成功報酬トータルで50万円から100万円が相場で、実費以外に様々な名目で150万円以上請求する弁護士は、本当にそれだけの価値があるのか気を付けたほうが良いと思います。
争う事案は、内容によりますので、相場といっても一概には言いにくいところがあります(複雑・重大事案では、数百万円かかっても仕方がない場合もあります)。
ところで、最近、ホームページなどで刑事弁護専門を派手にうたっている事務所があるようです。
中には、特段認められるような実績を上げていないにもかかわらず、法外な料金を設定しているところもありますので気を付けたほうがよいと思います。
【悪い人を弁護する弁護士は悪人か】
Q:悪いことをしたのに、不合理な否認をしている被告人がいますが、あれは弁護士が言わせているのですか。
悪いことをした人を堂々とする弁護士を信用できません。
A:
罪を認めるか、否認するかは、被告人が決めることで、弁護士が言わせることはありません(過失にあたるかどうか、正当防衛にあたるかどうかなど、生の事実ではなく、法的な評価にかかわる部分は弁護士がアドバイスして被告人の言い分を決めることもあります)。
被告人が不合理な否認をしていると内心思ったとしても、それは飲み込んで、プロとして被告人の言い分を法律的に翻訳して手続きに反映させるのが弁護士の役割です。
被告人の否認が不合理かどうかは裁判所が判断します。弁護士は被告人の言い分が真実であることを前提に活動するように決められています。それが任務です。要は、弁護士は、裁判官や裁判員とは違う役割が与えられているということです。
悪いことをした人をよく弁護できるな、という意見は、素朴な市民感情としては理解できますが、本当に悪いことをしたかどうかは調べてみないとわかりませんし、実際に悪いことをしていたとしても被告人にも言い分があるかもしれません。また、裁判では証拠を出したり、出されたり、証人を尋問したりなど様々な活動がなされますが、それらのルールはすべて法律に書いてあり、当然ながら被告人には何もわかりません。
それでも、弁護士なしで被告人を裁いてしてしまってよいと思いますか、そのような世の中で本当に構いませんか、という問題です。
たしかに、一部に、熱心を通り越して過剰な弁護をしている弁護士がいるとは私も感じています。
しかし、悪いことをした人を弁護する人=悪い人という見方は、よくよく考えると間違っています。